パーフェクトフィットを求めて
Daimler AG、最適パーツフィットでInnovMetricとLeicaの能力を信頼
マイクロカーや高性能クーペ、セダン、ステーションワゴン、多目的バン、商業用車両などを製品ポートフォリオに持つドイツのDaimler AGの工場で2番目に大きいのがブレーメン工場です。約14,000人の従業員を擁し、その床面積は850,000平方メートルに及びます。SL/SLKロードスターと、全Cクラス製品 (セダン、ステーションワゴン、クーペ、コンバーチブル) がここで製造されています。
近代的で洗練されたデザインのDaimler AGブレーメン工場。果てしなく続く長い廊下を歩いて最初に気づくのが、人がほとんど見当たらないことです。数百のロボットが様々なシートメタルパーツを所定の位置に持ってきて溶接する、完成したパーツを次のステーションに運ぶ、空間を最大活用するため完成品を頭上に運ぶなどの作業を手術並みの精度でこなしています。遠くから眺めると、遍在するロボットたちがダンスを踊っているようにも見えます。数人の工場作業員たちは自転車で工場内を素早く移動しています。ここではハイテクとローテクが調和よく共存しているのです。
製造プロセスにおける技術的な進歩によって、より大胆なボディ設計が設計者の製図板から組み立てラインに飛躍することができます。少し前まで、車は比較的シンプルで四角形の形状、各パーツはほぼ直線上にはめ合って収められていました。これに対し、近年の車は過去に比べてより複雑な形状になり、これらのパーツのはめ合い具合を検査する作業もますます複雑化してきました。
同社のBody-In-White (BIW) Rollout and Process Optimization Departmentは、まさにこの作業に取り組んでいる部署で、様々な車体パーツのはめ合い具合を検査する仕事を担当しています。さらに重要なことには、この測定結果に基づいて、極めて具体的なフィードバックが生産施設に伝達されるので、対象を絞った工具調整が可能になっています。
Mercedes SLKのホワイトボディの左側フェンダーの寸法精度を検査中のDaimler AGブレーメン工場の計測技術員のDirk Noffke氏。実際のデータとCADデータの比較結果がPolyWorksソフトウェアにリアルタイムに表示されます。
課題
BIWの測定および検査作業に関わるOperational EngineerのHenning Siemers氏は、「私たちの仕事はホワイトボディ全体の寸法精度を保証することです。もちろん、ホワイトボディはいずれも多くの個別パーツで構成されており、これらが全て完璧にはめ合っていなければなりません。私たちの第一の任務はホワイトボディ全体、つまりパネルギャップも含め、各パーツと車両全体の両方を検査して得られるデータを解析することです。この解析に基づいて生産施設に戻り、工具調整を行い、パーツが完璧にはめ合っている自動車を確実に製造できるようにします」と述べています。
今日の車体の複雑さと増え続ける許容値のため、従来の測定機器に限界を感じるようになりました。
「振り返ってみると、車はほぼ四角形の切片で出来ていて、あまり苦労せずにきちんとはめ合わせることができました。今の車はもっと曲線形で、形が突然変わる丸み部分があったり、他のパネルとあらゆる種類の角度や線で接続されていたりします。その上、各パネル間のほぼ完璧なはめ合いを求める要件は高度化する一方で、非常に厳しい許容範囲での仕事を強いられています。」 Operational Engineer Henning Siemers氏。
解決策
「弊社の車両の形状はますます複雑化しているので、それに対応できる新しいテクノロジーを模索していました」とSiemers氏は続けます。「毎年、私どものQuality EngineerのKarl-Heinz Boeckerがドイツ、ジンスハイムで行われるCONTROL展示会に出席するのですが、そこで2年前に当時試作品段階だったLeica T-Scanシステムを初めて見たのです。発表されていた仕様から、これは私たちが求めている製品ではないかと認識したのですが、この製品が本当に実装可能な状態かどうか確信できるまで待つことにしました。市場に出回っている他のスキャンソリューションの大部分について私たちが一番の問題だと感じたのは、ソフトウェアがハードウェアに付いていっていない可能性があるということです。こういった点を集めるのは比較的簡単ですが、その後はどうでしょう。私たちは、メーカーの多くがハードウェアと同じ関心をソフトウェアに払っていないという印象を受けました」数か月前、Boecker氏のチームはLeica Geosystems製品のデモを現場で行うことを決め、その結果、業界最高の組み合わせである、Leica LTD840 Laser TrackerをLeica T-ProbeおよびLeica T-Scanと併用するオプションを選択し、Leicaシステムの納品に至りました。
CADデータからの偏差はPolyWorks|Inspector™ソフトウェアを使用して視覚的に表示。偏差はカラーマップかベクターのいずれかを使用して表示されます。修正指示の生成のために情報が解析され、その後直接ツールに反映します。
Leica T-ScanとPolyWorks®ソフトウェアソリューションが強力な組み合わせであることがすぐに明らかになりました。
「Leica T-Scanが優れたセンサーであることはすでに知っていましが、PolyWorksスイートもそれに最適にフィットしていることも分かりました。このソフトウェアはとても高性能で、私たちは正しい道を選んでいると確信したのです」 Operational Engineer、Henning Siemers氏。
変化は良いことである
システムが導入されて以来、Leica T-Probe/T-Scanシステムは、パネルギャップの測定、パーツの屈曲の診断、リファレンスホール類の検査など、様々な目的で使用されてきました。Siemers氏は、Leica T-Scanシステムの別のアプリケーションのテストにもいそしんでいます。「私たちが見つけた新しいアプリケーションの1つはインラインキャリブレーションです。これまで、BIWはグリッドステーション内に設置して検査を行い、従来のCMM機器を使用して測定していました。150パレットあるときに高い許容値で測定しようとすると従来の方法ではすぐに限界が来てしまいますから、パレットも工具もライン内で測定できるようにしたい、そこでLeica T-Scanシステムとなったわけです。今考えている他のアプリケーションは、ロボットパス全体の検査なのですが、これも近い将来に行う予定です。」
メリット
Leica T-ScanシステムとPolyWorksの実装以来、何が変わったかという質問に対し、Siemers氏の回答は非常に具体的です。「スキャンを利用することで、以前よりももっと有益な情報を取得できるようになりました。パーツ解析の質は向上し、問題の根源により迅速に到達できるようになったため、たとえば、工具の使用をある特定のポイントで中断し、PolyWorksに表示される結果を基にパラメータを変更するなど、変更が必要なものに対象を絞ったソリューションを考え出せるようになりました」
Leica T-Probe/T-ScanとPolyWorksシステム使用のメリットも多様です。「ポータブルであるという点は大変ありがたいです。Leica Geosystemsの機器を使用すると、必要な全ての情報をたった2、3時間で収集し、解析は後で行うことができます。この方法だと、同時作業が可能になり、生産が長い間ストップすることはありません。1人のオペレータが測定を行っている間、もう1人は早くも結果の整理作業を行うことができるのです」
Leica T-Probe/T-Scanの組み合わせでは15m以内の範囲で測定が行われるので、技術員の作業可能なボリュームは30mになりますが、このことはHenning Siemers氏のチームに、今後たとえ測定要件が変更されたとしても、1回で複数のBIWに対応するのに十分な測定ボリュームで作業する準備はできている、という安心感を与えています。
システムがモジュラー式であることもSiemers氏のチームにとって重要な点です。「Leica T-Scanの購入と同時にLeica T-Probeも購入しました。触覚ワイヤレス測定は、ボンネットのようなねじれやすいパーツを測定するのにとても有益です。Leica T-Probeで素早く測定してパーツの状態を大まかに把握します。スキャンをすぐに始めると、ボンネットがねじれていることに気づくまでもっと時間がかかってしまいます。Leica T-Probeで2、3のポイントを見れば、すぐに状態が分かります。しかも、これは全てPolyWorks内で行い、Leica T-ProbeとLeica T-Scanの切り替えはたまにしかしていません」
Leica T-Scanシステムは、大きな測定領域が扱え、15mの範囲で測定オブジェクトの検査が可能。Leica Laser Trackerの位置を変更することなく、ホワイトボディの全側面を検査できます。オペレータが車両周囲を前後に移動しても、Leica Laser Trackerでは、Leica T-Probe/T-Scanのレーザーロックオンが測定領域全体でそのまま維持されます。