ビジネスの進化に合わせ、検査法も進化

 

Eifel社、InnovMetricと3D Scan ITの採用により射出成形金型の納期の50%短縮および利益維持に成功

Eifel社は、自動車内装製品の生産、試作用金型市場のリーダーで、医療、航空宇宙業界向けの金型も製造し、製品開発から生産用金型までの一括サポートの提供に特化しています。同社では、車のハンドル、エアバッグハウジング装置、センターコンソール、ヘッドライト、シートのバックパネル、アフターマーケットパーツといった製品用の金型を製造しています。

一次サプライヤでエンジニアリングでの議論やサプライヤ交渉が長引いた後すぐに生産を立ち上げなければならない、海外のサプライヤによるミスをやり直しでは修正できない場合に代わりの金型を製造しなければならない、といった状況でエンジニアリング、設計、金型の一括サポートの要請を受けるのが、このEifel社です。

課題

スキャニングおよび点群ベースの検査以前、金型メーカーは、製造業向けに開発された接触測定によるポイント検査で間に合わせるしかありませんでした。この方法ではサーフェスの99%以上が検査されないため、金型や成形パーツには不十分でした。

接触式三次元測定機 (CMM) は、1つずつ3Dポイントのデータを収集するので、接触式三次元測定機から結果を取得するには何日もかかりました。「数百のタッチプローブ測定ポイントでは、スムーズにブレンドしているはずのサーフェス間のハードライン、突起、たわみなど、1つの型キャビティで考えられるサーフェスの問題をすべて検出することなど不可能でした」と、同社のHecker氏は説明します。「そこで、接触式三次元測定機を売り払って、3D Scan ITとPolyWorksをクラスAサーフェス検査に使うことにしたのです」。

Eifel社も同社の顧客も、自動車業界でいわゆるクラスAサーフェスの品質、つまりディーラーのショールームでひと際目立つような美しいサーフェスを熱心に追求しています。競争の激しい自動車業界ではスタイリングがすべてです。ネットシェイプ加工では、高精度な工作機械とコンピュータ数値制御 (CNC) を用い、数理モデルに合わせて正確に金属を切削します。数理モデルはそのパーツを定義するコンピュータ支援設計 (CAD) のデータです。手磨きやベンチングなどはほとんど行われなくなりました。

「金型製造で何が変わったかと言えば、今やクラスAサーフェスが計測可能になったことでしょう。つまり、金型メーカーはクラスAサーフェスの仕様を基準に検査できるようになったわけで、これによって金型製造でネットシェイプ加工は実用的なソリューションとなりました」、Hecker氏はこう語ります。Eifel社では、これをビジネス機会の増大ととらえ、同社のサービスを設計およびエンジニアリング分野に拡大する、専門を主にエアバッグとハンドルに絞る、そして高密度な点群検査技法を日常業務のあらゆる面で構築する、という方針を打ち出しました。

Eifel社はスキャニングを使用した検査のおかげで、これらすべてを実現することができました。 

ソリューション

Autoliv社向けのEifel社のソリューション

Autoliv社に対し、Eifel社は金型設計とエンジニアリングサービスを提供し、運転席側エアバッグシステムの6つの全コンポーネント用金型を製造しています。金型製造プログラムにはエアバッグのエンクロージャ、ハンドル枠の飾り (ベゼル)、クルーズコントロールおよびオーディオシステム用のボタンなどが含まれます。

「Eifelは、一次サプライヤへの増大するニーズを満たしています」と、Hecker氏は言います。「求められているのは、プロジェクトの最初から最後まで、つまり初期のスケッチ段階から、たとえそれが封筒の裏に描かれただけのものであってもすぐにとりかかり、サブアセンブリラインまで一貫して対応できるような金型サプライヤです。」 Hecker氏は、自社の設計と製造の統合型ビジネスを同時製造開発・製造 (SPDM) と位置付けています。「私たちは、単に独立の金型工場やデザイン事務所なのではありません。製造開発センターなのです。」

金型製造では製造できない金型の設計はしない、ということが重要ですが、それにはクロスファンクショナルチームのメンバーとして金型設計者、エンジニア、機械工が常に連絡を取り合って仕事を進める必要があります。これがEifel社におけるSPDMの本質です。

SPDMでは、金型製造のすべての段階で検査による検証が求められるため、この「デザインビルド」(DB) プロセス全体を通じて3D Scan ITが重要な役割を果たします。デュアルカメラ式Imetric-IScan白色光スキャナを搭載した3D Scan ITが、重要な段階ごとに金型加工の各作業を検査します。

  • アルミ試作用金型
  • 金型試作および低率初期生産
  • 量産化対応の金型製造

 

「検査を通じて、寸法面ですべて問題ないということを再確認できるため、お客様に対して安心してお任せください、と言えます。」 

(Autoliv North America、エアバッグおよびハンドル担当主任エンジニア、Vern Phillips氏)

Eifel社向けの3D Scan IT社のソリューション

白色光スキャニングおよび点群ベースの検査により、Hecker氏のSPDMビジネス戦略はどの決定点でも補強されました。この検査法から得られるデータに基づいて、Eifel社のエンジンニアと同社の顧客は重要な金型関連の決定を下せるようになり、「各プロセス検証ステップによって、金型製造プロセス全体が速くなり、信頼性も向上しました。パーツを製造する前にあらかじめ問題に対処できるため、あとで慌てることがなくなります。金型に少しでも問題点はないか、プロセスについて対処の必要な問題がないかどうかを把握できるのです」(3D Scan IT社長Bob Squier氏)。

 

3D Scan IT向けのInnovMetricのソリューション

何百万もの3Dポイントでサーフェスが1分以内にまんべんなくスキャニングされます。「PolyWorksは重複する全スキャンデータをシングルスキン・ポリゴンモデルに変換してくれます」と、Squier氏は語ります。「ほんの数分で、3Dポイントデータはもっと管理しやすいファイルサイズに95%以上縮小されます。その後、お客様のCADシステムからの数理モデルを基準にして、このポリゴンモデルを検査できます」。

 

数百万のポイントで金型の品質を評価

データは白色光デジタイズシステムのImetric IScan Vを使用して収集されます。このスキャンシステムは150立法ミリメートルにキャリブレーションされ、0.080mmの点間隔または分解能が得られます。つまり、1平方ミリメートルにつき150ポイント以上になります。

IScan Vスキャナは3Dカメラと同様に機能します。カメラで認識されるピクセルごとに3D座標が計算されるため、3D画像またはスキャンごとに130万ポイントが測定可能になります。1つの視点からパーツのすべての形状を取り込むことはできないため、複数のスキャンが収集され、共通のナビゲーションポイントを使用して位置合わせが行われます。

 

PolyWorksの点群ベース検査

オブジェクトのスキャンを100%実行後、データはポリゴンモデルにマージされます。IMMerge機能により、点群サイズは大幅に削減され、検査時間が短縮し、より円滑に検査を行うことができるようになります。このポリゴンモデルは、IGESからのCADモデルを基準に検査されます。ベストフィット位置合わせのテクニックがパーツデータムの位置合わせスキームと組み合わせて使用されます。さらに、多様なマクロ機能によって対話式の検査マクロをすべてのパーツに対して実行でき、検査工程の再現性が保証され、検査速度も向上します。

この検査マクロでは、ベストフィット位置合わせ、基準形状との比較、比較結果画像の取り込み (事前に定義された視点からの取り込み)、GD&T要素  (関連する全てのデータムで検査)、比較ポイント (離散ポイント、CMMスタイルの検査結果用)、境界およびエッジポイント (誤差注釈機能を使用)といった検査要素が実行されます。これらの結果は、すべてPolyWorks EZLayoutレポートツールでレポート出力されます。

この検査マクロではさらに、EZLayoutツールを使用して、レポートされた検査要素をすべて標準の検査レポートレイアウトに自動的に挿入します。このレポートは印刷したり、PDFファイルとしてレビュー用に配布したりできます。


デジタイズシステム Imetric IScan V

解決策

わずかな誤りも許されない自動車一次サプライヤ ビジネスにあって、スキャニングおよび点群ベースの検査がEifel社のSPDMビジネス戦略にもたらした効果はいくら強調してもし過ぎるといったことはありません。SPDMは正確なサーフェスデータに依存しており、そのようなデータ抜きにして、Eifel社の他のシステムやテクノロジーはどれも効果的であるとは言えないでしょう。

 

点群ベースの検査のスピード、包括性および精度により、海外の金型メーカーが匹敵できないようなターンアラウンドタイムが実現します。

 

スキャニングおよび点群検査法のおかげで、「私たちは常にデータを完全検証して、加工するサーフェスの品質を常に保証できるようになりました」と、Hecker氏は述べています。「今や、マスターモデルに正確に適合する金型、正確な寸法および許容値の成形パーツ、ハードラインのない、スムーズにブレンドしたサーフェスを製造できる自信があります」。

「スキャニングのおかげでエンジニアリングの変更を簡単に取り込めるようになりました。修正されたパーツを簡単に再スキャンし、以前の3D形状と比較することができます。良好な比較データが得られるようになっただけで、私たちのクリティカルパス計画を向上させることができました。私たちもお客様もスケジュールどおりに完成できると予想できるようになりました」。

軌道どおりにビジネス変革を確実に進める

Eifel社は、SPDMと検査から多大なビジネスメリットを得ており、競争が激しい市場で一定して売り上げを伸ばし、納期を半分に短縮して利益を維持しています。

Hecker氏は、スキャニングおよび点群ベースの検査のメリットとして以下の点を挙げています。

  • 重要な金型関連の決定にかけられる時間が倍増した。考える時間および対応する時間が増えた。
  • 品質保証の点で著しく向上し、サーフェスの欠陥を見逃さなくなった。
  • 収縮や反り変形の計算でエラーを出したり、重要な詳細を見逃したりしがちな低労働力率の金型メーカーに対して差別化できるようになった。
  • 良好な比較データを迅速に取得でき、クリティカルパス計画を向上させることができるようになった。
  • Autoliv社にEifel社の信頼性を定着できた。

Autoliv社にも同様に多大なメリットがもたらされました。

Phillips氏はその例として以下の点を挙げています。

  • PolyWorksカラーマップの優れたデータ表示のおかげで、最終成形パーツをマスターCADモデルと比較でき、パーツの収縮による影響を評価できるようになった。
  • すべての段階において100%検査を行って情報ループを閉じることができ、材料収縮で完全に正確な金型が保証されるようになった。
  • 自動車業界で好まれる寸法確認法である、検査治具への型締めによる変形のないサーフェス検査を行えるようになった。
  • 顧客に対するAutoliv社の高い信頼性を維持できた。

 

Hecker氏は結論として、「Eifelではスキャニングおよび点群ベースの検査によってSPDMビジネス戦略が軌道どおりに進み、そのメリットを確実に活かしていけると見込んでいます」と語っています。