コンピュータ制御のフライトシミュレーション向けサーフェスデータ生成
Lockheed Martinは、1950年代の戦闘機に対する3Dスキャンと点群プロセスを大至急実行したかった。
2005年、Lockheed Martin Missiles & Fire Control unit(LM M&FC)は50年代のスウェーデン製ジェット戦闘機、Saab A-35 Draken、の航空力学に興味を持ち、LM M&FC の航空力学エキスパートは、実際の航空力学的性能を得る為に、エンジニアリング解析ツールにインポート出来る非常に正確な航空機のデータマップを必要としていました。
航空機全体の完全で正確なサーフェスデータ及び武器と銃庫の高解像度スキャンが必要であり、Lockheed Martinはコンピュータ制御のフライトシミュレーションに送り込むサーフェスデータを生成するスキャン能力に関して検討した結果、Exact Metrologyに辿りつきました。
データは、武器搬送システムが21世紀の戦闘環境下でも存続出来る事を保証する必要があり、更に、Lockheed Martinのような航空宇宙産業のコントラクターは 、高額な検査費用を削減する方法を絶えず探していました。この解決策の1つが、軍用検査設備の代わりに民営のアクティビティを使うこと、そして物理的方法よりもデジタルな方法を取ることでした。
課題
- 翼長31フィートで50フィートの長さのある普通サイズの航空機の3D形状を取り込むこと。
- シミュレーションソフトウェアにNURBS サーフェスを短時間で渡すこと。
- 高/低解像度スキャナーから得られたデータを処理すること。
スキャン/デジタル化において直面した大きな課題は以下の3つでした:
- スピード: Lockheed Martinは、フライトシミュレーションで90日間絶えずデータ不足に直面していたので急いでおり、初期のサーフェスデータが一週間後には必要でした。そして、これに対してはExact Metrology が対応しました。
- モデルのサイズ: Drakenはデジタル化するには巨大すぎるモデルで、翼長31フィートで50フィート以上の長さがあり、方向舵の高さは14フィート近くありました。ファイルサイズを最小化するのには、非常に詳細なエリア用の高解像度スキャナー (コニカミノルタのVivid 910)と、フラットなエリア用の低解像度でより速いスキャナー(LeicaのCyra2500) という、2つのタイプのスキャナーが使われました。
- 適応性: Exact Metrology は、高/低解像度スキャナーから得られたデータを処理するソフトウエアソリューションを必要としており。
これらの課題に対応するため、InnovMetric Software が出している優れた点群処理ソフトウエアソリューションであるPolyWorks®を取り入れることにしました。
解決策
その分野に合ったクルーを選ぶこと
Exact Metrologyは、長/短距離スキャンにおけるその独自の経験 のおかげでこの仕事を獲得する事が出来、またその経験があったからこそ、すぐに対応する事が出来ました。
Exact Metrologyは、2005年のサンクスギビングデーの1週間前にLockheed Martinからの電話を受け、そしてその3日後にはマネージャーであるMatt Cappel氏とスキャナーオペレーターがロサンゼルス行きの飛行機に乗っていました。その後、スキャンは2日で完了し、サンクスギビングデー当日には彼らは既に自宅に戻っていました。スキャンは、カリフォルニアのモハーベ砂漠にあるInyokern で行われ、残っている6機のDrakenが一新され飛ばされました。
Drakenプロジェクトの為、Exact Metrologyは、1つのCADモデルに10,000倍や5桁ほどもの異なる解像度で、何ギガバイトもの点群データを素早く処理する必要があり、この高解像度の作業では、1つにつき平均して250,000点ある点群が266収集されました。これにはミノルタVivid 910スキャナーが使われ、至近距離の短距離作業で約2平方フィートのデータの取り込みが行われました。
低解像度スキャンはLeica Geosystems のCyra2500で実施され、これらのスキャンでは約2,000万点が収集されました。「こちらも最小の航空力学的形状に対してでさえも十分に正確な性能を持っているのですが、リベット頭やヒンジポイントのような不必要なデータをキャプチャーするほどの解像度がないので、その点で使い分けることが出来ます。」とCappel 氏は述べています。「低解像度作業は私達にとって、むしろ測量アプリケーションに近いものです。」
4.6ギガバイトのデータを集めた約250の高/低解像度スキャンという全てのスキャンとデジタル化作業の後、Exact MetrologyがLockheed Martinへ提出した最終的な成果物は、相対的に小さな200メガバイト(MB)の未圧縮ファイルでした。
スキャンの位置合わせ
PolyWorks|IMAlign™ モジュールは、シングルモデルに260のスキャンを位置合わせするのに使われます。PolyWorks の位置合わせ技術は、パーツ上のターゲットもマーカーの使用も必要としません。代わりに、互いにそれらを位置合わせするのにスキャンしたそのものの形状を使います。「航空機上で位置合わせ用ターゲットを使う必要がないと言うことは、スキャンプロセスを劇的に向上させます。」とCappel氏は断言します。
ポリゴンモデル
スキャンが位置合わせされた後、結果として生じた点群モデルはPolyWorks|IMMerge™モジュールで、STLフォーマットでポリゴンモデルに変換されます。PolyWorksは、フラットエリアでより大きな三角形を作る一方で、エッジやフィレットでは、高解像度を保ったままサーフェス曲率に適合するようにポリゴンメッシュ(三角形)を作成します。一部のシミュレーションパッケージソフトはSTLファイルを処理できますが、Lockheed Martin M&FC で使われていたソフトはそれらをサポートしておらず、CADで使用可能なファイルが必要とされました。
曲線ネットワークを構築する
CADで使用可能なモデルを作成する為、PolyWorks はポリゴンモデル上でNURBS (non-uniform rational B-splines)と呼ばれるサーフェスの数学的表現を計算します。NURBS サーフェスを計算するのに先立ち、サーフェスがどこに適合するか決定するために、曲線ネットワークがポリゴンモデル上に形成されます。PolyWorksでは、この曲線ネットワークを自動でも手動でも作成する事が出来ます。また、PolyWorksの抽出アルゴリズムを使えば、マウスを1クリックするだけで特徴曲線を抽出する事が可能で、 さらに曲線ネットワークは、ユーザーが数回クリックするだけで、手動で品質を向上させることが出来ます。
NURBSサーフェス
NURBSサーフェスはその後、曲線ネットワークに自動的に取り付けられ、これらのサーフェスはLockheed Martin の解析システムにIGES もしくはSTEPファイルとしてエクスポートされます。これらの最終的な成果物は、正確さ、ファイルサイズ、パッチの数という観点から、Lockheed Martin の要求に合っていました。
PolyWorksは、CADで正常に扱えるNURBSサーフェスを生成します。
NURBSサーフェスの品質に 大きく影響する3つの要因:
- NURBSサーフェスの元にあるPolyWorksポリゴンモデルの高い品質。
- 曲線ネットワークを構築やNURBSサーフェス作成時により重要な特徴曲線を決めることができること。
- 曲線ネットワーク作成時により論理的なパッチレイアウトにするためにT字の接合が使用できること。
メリット
スキャンから最終的な成果物まで、Exact Metrologyがデータ取得、編集、そして大量のSaab A-35スキャンデータをLockheed Martinの 要求に合う形式にするのにかけた時間は2週間半でした。「数ギガバイト範囲での業務において、これはとても早いターンアラウンドです。」 とCappel氏は言い、データ取得時間を67~80%、データ処理時間を50%、節約できたと推測出来ます。
「一緒に働いたLockheedの人々は皆、データの質と包括性に大変満足していると言っていました。シミュレーションスケジュールを狂わせる誤作動や再起動は、これまで一度もありません。またInnovMetricのアプリケーションスペシャリストには大いに助けられており、まるで社内に技術スタッフを増やし、苦境を乗り越えられたかの様です。」とExact MetrologyのマネージャーであるMatt Cappel氏は述べています。
数量的な利点:
- 航空機全体の外形サーフェス全てをスキャンしてデジタル化する作業が、たった2人の人手で2日間だけで完了しました。他の方法では2~4倍はかかるので、つまりはデータ取得時間が67~80%節約出来たというわけです。
- 4ギガバイトのデータを正確に扱えると信用出来るのはPolyWorksだけです。別の方法では、ファイルをいくつかのピースに分割しなければならず、追加の結合手順やデータアセンブリが必要になってくるので、処理時間が2倍もしくは3倍にもなり得ます。
- 時間的要素というのは最も重要なところであり、PolyWorksに匹敵する速さの競合パッケージはどこにもありません。PolyWorksなら他の効率の悪いソフトウエアに比べ2週間は時間の節約が出来ます。
- 風洞での物理的な検査に代わりコンピュータベースのシミュレーションにする事で、劇的なコスト節約になりました。
将来性
Lockheed MartinがExact Metrologyに説明したように、Saab A-35プロジェクトの目的は、民営企業からの潜在的な検査航空機の航空力学に関してさらなる理解を得ることであり、それが達成されました。
Drakenの航空力学は 時間という点において革新的であり、それは半世紀後の今日においてもいまだ印象的なものです。Drakenは以下のように設計されています:
- 紛争地帯近くの小さな飛行場での短距離での離陸・着陸が可能。
- 高速・低速性能の最適な組み合わせ。
- ミッション中に数分で再武装可能。
Exact MetrologyとInnovMetricのおかげで、Lockheed Martinは現在、素早く低コストで、フライトシミュレーションシステムに全ての航空力学の詳細を取り込む事が出来たのです。