Scanning And Inspection Pty
Scanning and Inspection Ptyは、PolyWorks®を使い、1時間未満でドア枠と車体間の関係を解析します。
どのメーカーも、発生した問題を解明することが、予想以上に複雑な過程であると知っています。調査には時間もお金も人員もかかりますし、ようやく問題が特定されたとしても、数量的な調整を施すには、また別段階の調整が必要になります。時折、製造された部品が設計部品と異なっていたり、あるべき状態またはあるべきだった状態になっていないことがあります。そうした場合、どの程度、どの部分が、どの方向に異なっているかが問題です。オーストラリアのある大手の自動車メーカーにとっては、ドア組み立て部の水漏れの原因を特定することが最優先事項でした。
Faroアームに取り付けられたModelMaker Z70
課題
ある自動車メーカーは最近、彼らが製造・組み立てをしているある客席側ドアシールの位置合わせに関して、この問題に直面しました。ある特定の生産期間に製造された自動車は、設計通りにドアやシール全てが車体と継ぎ目なくぴったりと合いました。しかし、その後に生産ラインから来た自動車は、テスト段階で水漏れしていました。最初の課題は水が漏れてくる場所を見つけることでした。ですが、解析上もっと困難だったのはドア枠と車体間の関係が水漏れしていない自動車のそれと何が違うのかを解明できても、それがどこの部位で、どの程度、どの方向に問題があるのかというところまで突き詰めて明らかにすることだったのです。
製造された自動車組み立てのある1つのバッチに水漏れの問題がなく、後の段階で製造されたものが水漏れしていた場合、それらの工程に何らかの違いがあるはずです。問題のあるドア枠組み立て部は、なぜ対応する‘正常な車体’とずれてしまったのでしょうか。製造段階にどのような変更を加える必要があるのかを確認するために、メーカーはその違いを定量化可能な形にする必要があります。‘正常な’ドア枠と‘正常でない’ドア枠組み立て部とのあいだの関係性と変動量の値を求めなければならないのです。そして、最新のレーザースキャン技術とPolyWorksソフトのおかげで、数時間のうちに詳細な比較解析が得られました。
解決策
データの取得
面形状の情報を素早く効率的に取得するために、Scanning and Inspectionのスペシャリストは、多関節アームに取り付けたレーザースキャナーを使いました。使用したレーザースキャナーのタイプは、0.05mm×0.05mmという驚きの密度(平方ミリメートル辺り約400点)で形状をデジタル化できる高品質スキャナーModel Maker Z70です。これにより、部品の完全な3Dデジタルデータが取得でき、利用可能な情報に変換されます。スキャナーは、その空間位置と姿勢の情報を取るためポータブルCMM(この場合、サイズにより最小±0.0051 mmの繰り返し精度で測定できるPlatinum Faro Arm)と組み合わせられます。Faro アームとMMZ70レーザースキャナーは、頑丈な三脚と共に現地に運び込み、問題となっている自動車ドアに隣接した位置にセットする事ができます。そして、必要な形状データの取得は、一台あたりほんの数分で完了します。
PolyWorks のプロセス
スキャンデータが収集されると、解析の後処理段階の始まりです。PolyWorksを使い、Scanning and Inspection Pty Ltd.のスペシャリストは、コンピュータ上で、水漏れのある自動車からのレーザースキャンデータを‘正常な’自動車の1つに位置合わせし、高度な測定と比較解析を実行します。ただし、比較解析の実行に先立ち、一連の点群操作をPolyWorksで行う必要がありました。
データ取得
スキャン位置合わせの改善
データ取得段階中に、いくつかのスキャンパスが取得されます。各スキャンパスは、レーザースキャナーの位置変更に対して空間的な基準を提供する多関節アーム自体の位置合わせ技術を使って自動的に位置合わせされます。レーザースキャナーによって取得された点群のほとんどが、スキャナーの別のパスにより既に構成されている他のものの上に乗るため、一部の部品は、結果的に1回以上測定されることになります。これら多層データのエリアは重複エリアとして参照されます。
ポータブルCMMから取得した点群の位置合わせ状態を改善するため、PolyWorks|IMAlign™TMモジュールはこれらの重複エリアを全てのスキャンの再調整に使います。まず始めに、位置合わせされた点群上で偏差解析が実行されるのですが、PolyWorksは自動的に各重複スキャン間の平均距離を算出し、偏差値を示すカラーを表示します。これにより、ユーザーは一目で許容値外のスキャンを確認し、再調整により改善することが可能となります。
その後、PolyWorksのベストフィット位置合わせ技術を使い、再調整が実行されます。同じ付近でのパッチ間の‘スライド’を防ぐ為、自由度を制約する8つの基準点がスキャン毎に自動的に設定されます。この機能が、スキャン位置合わせ中に度々スライド問題に直面してしまうその他のスキャン位置合わせソリューションと、PolyWorksが違うポイントです。制約されたベストフィット位置合わせが実行された後、新たな偏差解析が求められ、カラーマップが表示されます。
最終段階は、PolyWorksの‘重複を削減する’技術を使い、全ての重複しているスキャンをインテリジェントに平均化することで、一層の点群モデルを作成する事です。作成された点群は、個別比較などの更なる解析に使用されるサーフェスに変換できます。スキャンの手順は‘水漏れの問題のある’自動車も‘問題のない’自動車も同じでした。ポストプロダクション構造用鋼部材だけが見えるように、全ての周辺トリムは窓枠とドア枠から取り外されます。データ取得過程のあいだは、ドアは常に閉められた状態で、また、漏れのあるシールに関係のあるエリアはMMZ70レーザーを使ってスキャンされます。
レーザーライン光が測定面上で移動すると、1秒間に何万という3Dポイントが集められ、その測定点群が即座にPC画面上に表示されます。このリアルタイム測定点群表示機能は、見落としていたり、スキャンできていないエリアが測定の時点で特定できるため、取りこぼしがありません。
ポリゴンモデルの作成
ポリゴンモデルの作成
‘問題のない’ドア枠組み立て部と‘問題のある’ドア枠組み立て部の面形状を比較するために、Scanning and Inspectionは、点群を面形状データとして使えるものに変換する必要があります。PolyWorksは、非常に短時間で数千万の点を面形状データとして使える三角メッシュに変換します。
スキャンオブジェクトの様々な形を正確に描写するために、PolyWorksは、ユーザーが指定した許容値に基づき、自動車曲面上の曲率の小さな平坦に近い部分にはより少ない三角形を、形状が複雑な部分には多くの三角形を使います。最近傍検索距離パラメータもまた変換に先立ち、三角形による曲面を作り、内在するデジタルノイズを最大限に削減するために規定されます。
個別比較
複雑な一連の‘最小二乗法’計算と曲面解析を使い、2つの新たに三角形化し最適化されたレーザースキャンデータセットは、PolyWorksのベストフィット位置合わせ技術を使って位置合わせされます。PolyWorksはその後、2つの組み立て部品の比較を行い偏差のカラーマップ表示し、漏れがある‘問題のある’自動車ドアがどのように‘問題のない’自動車ドアと関連しているかを特定するパターンを容易に識別することを可能とします。
センターピラーとドアの低い部分は、2つのドア間の偏差が±0.5 mmより低いことを示すライトグリーン(アクアに近い)表示でした。ドア自体に溶接された鋼製窓枠のような他の部分は、偏差が±1-2 mmであることを示すグリーン表示、車のシャーシ部分のオレンジ表示もまた、偏差±1-2 mmを示しています。
言い換えれば、2つの自動車のセンターピラーが0.5mm以内で位置合わせされているとき、漏れのある自動車の窓枠は実際には、漏れのない自動車のものよりも0.5mmから2mm程低く位置合わせされているということになり、このスペースが水が通り抜ける原因となっていました。
メリット
Scanning and Inspectionのエンジニア達は、何らかの形でシャーシを調整するよりもドア枠の位置を決める溶接の接合部を変更する方が簡単だと判断し、窓枠とドアとの溶接部分は、枠が(漏れのないドアと比較して)それほど低くならないように調整されました。
PolyWorksでの全検査プロセスは、1時間かからずに実行されます。
調査から得られた結論は、顧客の関心が自動車の窓枠、具体的にはメインドア組み立て部への溶接方法に集中していたので、溶接処理に関して、窓枠が最初のCADで設計された理想的な位置から離れ過ぎないように適切な調整が実施されました。
FaroアームとMMZ70の正確さと適応性がワールドクラスのPolyWorksソフトウエアとともに使われたことで、この自動車メーカーは次のことができるようになりました。
- 漏れ問題のもとを素早く特定する。
- ‘問題のある’自動車ドア組み立て部の‘問題のない’ものに対する物理的偏差(どのくらいか、どの部分か、どの方向か)を正確に測定する。
- 窓枠がドアと接する部分の溶接を調整することにより、組み立て工程を修正する。
- 全検査工程を1時間以内で実行する。