全てをチェックして万全を期す
PolyWorks®により、BombardierのCRJシリーズの対称性およびアライメントチェックの時間が75%短縮
航空機が滑走路に着陸する際、予期しない地面衝突時の衝撃力により、航空業界で一般的に「硬着陸」と呼ばれる事故が発生します。このような事故は頻繁に発生し、どのパイロットもパイロット人生で一度は硬着陸を経験するものと考えられています。気象条件、機械的な問題、航空機の重量超過、パイロットのミスといった原因に関わらず、硬着陸の影響の重大性は、乗客が不快感を少し感じるだけというものから、航空機に多大な損傷を起こすものまで様々です。このため、硬着陸が発生した場合は、次のフライトの前に航空機の構造に損傷がないか確認する必要があります。Bombardier Aerospaceでは、この作業はGround Support Equipmentチームが担当しています。
世界第3位の民間航空機メーカーであるBombardier Aerospaceは、ビジネス、商業用、特殊利用、水陸両用の各航空機市場向けの革新的な航空製品の設計、製造およびサポートを行っています。顧客サービスと航空機の可用性面で新基準を確立することに専心し、顧客に総合的なサポートおよびサービスを提供しています。CRJ Ground Support EquipmentチームはCustomer Support Groupに属し、自社製の航空機が飛行し続けられることを願い、技術的な問題の解決に尽力するエキスパート陣で構成されています。
航空機が飛行差止めとなると、その損失は最高で1日10万ドルにも上るため、CRJ Ground Support Equipmentチームは世界中24時間体制で、航空機を一刻も早く飛行可能な状態に戻せるように尽力しています。
CRJ Ground Support Equipmentグループは、主に商業用航空機部門を担当し、最近ではBombardierのリージョナルジェットのCRJ NextGen Series に専従しています。構造工学の解析のために対称性およびアライメントチェックが必要となる航空機事故が発生すると (航空機が荷物輸送車両やボーディングブリッジと接触した場合や硬着陸後など)、CRJ Ground Support Equipmentグループに通知され、世界中のどの場所でもただちにIn Service Engineeringグループが出動します。
In Service Engineeringチームは現場に到着すると、事故によりコンポーネントや航空機の構造に耐空性制限に影響する可能性のある偏差あるいは損傷が発生していないかどうか判断するための診断を行います。この診断は、見過ごされかねない損傷を発見するための対称性およびアライメントチェックの実行といった航空機の検査を通じて行われます。検査の結果、航空機が規格外であると診断された場合は保守が行われます。これが完了すると、最終的な対称性およびアライメントチェックが行われ、航空機の耐空性が再確認されます。
対称性およびアライメントチェック
対称性およびアライメントチェックとは、翼尾が航空機の縦軸に対して対称であるかどうか判断するために行う航空機の機体の寸法検証です。対称性チェックには機体の垂直偏差、水平尾翼の上反角、エンジンの垂直偏差、エンジンの水平アライメント角、機体の水平偏差、翼と水平尾翼のアライメント、垂直尾翼のアライメント、翼取付角およびねじれチェック、着陸装置チェック、ウィングレットの対称性などが含まれます。航空機の構造のアライメントチェックとは、各主要コンポーネントの位置関係の検査が必要であることを意味し、これには翼グループ、尾グループ、機体グループの検査などがあります。
チェックの前に、測定の精度を保証するために特定の状態を作る必要があります。これは主に、空気の流れや日光がアライメント測定に影響しないように閉鎖された格納庫に航空機を保管する、モーター運転後最低4時間経過している、どの燃料タンクも燃料が排出されている、航空機が中立/水平位置にあるようにする (ジャッキに取り付けられ、重量が平均的に分散されている) などです。
課題
従来の方法
従来、対称性およびアライメントチェックは重錘および基準面法を使用して行われてきました。これは、重錘、精密光学レベル、トランジットルーラー、テープ、多数の幾何学的補助品などで構成される対称性およびアライメントキットを使用する手動測定です。ただし、各キットは航空機モデルごとに決まっており、他で使用中の場合は可用性が制限されます。また、従来の方法では2人の技術員が必要で、完了するのに最短で12~14時間かかります。
このチェックを行うには、航空機上の対称ねじをデータムポイントとして使用してターゲットポイントを取り、重錘線を床に落として手動で測定します。航空機は非常に大きいため、測定には時間がかかり、技術員にとっても物理的に負担がかかる作業です。これに加え、レポートは手動で行われるため、測定用に1人、結果の記録用に1人、と2人の技術員が必要です。
手動測定では精度を保証するのに時間と根気が必要とされる。
従来の方法で使用される対称性およびアライメントキットの物理的サイズについても、また別の課題があります。キットは特大のクレートで運搬されるため、世界中の様々な場所に出動する移動サポートチームとともに、キットも必ずその場所に運送されるようにするのは至難の業です。追加コスト、遅延、税関といった問題が発生するのは珍しくありません。その結果、時にはキットの到着までチームが待機を強いられ、待機中の時間は拘束時間に含まれないといった状態になることもありました。また、キットを元の場所に返送することも別の課題をはらんでいます。機器や備品は他のクルーが梱包するため、工具の損傷や紛失などのリスクがあるからです。
このためBenoit Roby氏のチームでは、この対称性およびアライメント工程を、全ての航空機に共通のポータブル型システムを使用して簡素化する必要があるという結論に達しました。「従来の対称性およびアライメント用キットの運送には多大な欠点があったため、3Dスキャンソリューションの使用を考えるに至ったのですが、弊社のレポートシステムの入力/出力に影響しないソリューションを探していました」とRoby氏は語ります。CRJ Ground Service Equipmentチームの目標は、機器や備品をなくすこと、時間を節約すること、そして全ての技術員が計測の専門家ではないため、測定機器をできるだけ簡素化することでした。
「ポータブル型3D測定システムに決定後、ツーリングサービスの測定システムの専門家に相談したところ、PolyWorks®を強く薦められました」
解決策
3D計測法
Roby氏のチームはポータブルなLeica Absolute Tracker AT401および1.5インチ型コーナーキューブ・リフレクタ (CCR) とInnovMetricのPolyWorks|Inspector™ソフトウェアを組み合わせたオプションを選択しました。この3D計測法により、全ての航空機間で互換性があるユニバーサルなソリューションが生まれ、もはや工具の可用性が制限されるという問題はなくなります。「この新しいソリューションは、ユニバーサルでポータブル、かつ私たちの持ち込み手荷物にすっぽり収まります。これは、飛行機で移動する際に機器をチェックインする必要がなくなるのでとても大きなメリットです」とRoby氏は語ります。この機器に、ラップトップと自分たちで作ったレーザートラッカーの搭載用スタンドを加え、対称性およびアライメントキットは完成です。これで貨物輸送が著しく簡素化されたのです。
このポータブル3D計測ソリューションのもう1つのメリットは、上述したような対称性およびアライメントチェックを行うのに最適な状態が常に望めるわけではない点にあります。このソリューションが提供する柔軟性と堅牢性により、一部の準備手順を完全に省くことができ、輸送関連の多くの制約が軽減されます。
選択された3D計測ソリューション。
このソリューションのROIメリットは明快です。2人の技術員が12時間かかった作業を今では1人の技術員が6時間で完了できるのですから。これは非常に大きな節約です
とRoby氏は述べています。以前の方法では輸送中の遅延が頻繁に発生した上、CRJ Ground Support Equipmentグループとしては定額のサービス料金を設定することはできませんでした。3D計測法のおかげで今やコストの見積もりが可能となり、Bombardierのような組織内では運営コストを計画できることが重要であるため、この点は大きなメリットです。
CCRによって測定されたデータはすぐにPolyWorks|Inspectorで利用可能になる。
メリット
アプリケーション
PolyWorksにより、対称性およびアライメントの手順全体が簡素化されます。技術員が現場に到着し、機器を設置し、航空機上のターゲットポイントを指定します。これが完了すると、CCRを使用して測定を開始するだけで後はPolyWorksが処理します。軸の特定、機器の移動、ペアリング、マッチ調整といった操作はPolyWorksで行われます。測定値が取得されるたびに、データは瞬時にPolyWorksでアクセス可能となり、さらに良いことにレポート全体で自動更新されます。
PolyWorksにより人的ミスも減ります。「PolyWorksには信頼を寄せています。もし工程でミスが発生してもすぐに特定してくれますから」とRoby氏は語ります。ターゲットポイントの測定が完了すると、技術員はすぐに、PolyWorks内のCATIA CADモデルの基準ポイントと比較したリアルタイム偏差を取ります。Roby氏はこのソフトウェアの相互運用性は直観的であると感じています。実際、Roby氏の購入決定の大きな要因は、CADソフトウェアからインポートされたモデルをPolyWorksで簡単に処理できる点と、レポート生成がスムーズな点でした。
レポート機能
PolyWorksの使用により、レポート生成もこれまでになく簡単になりました。結果はExcelにエクスポートされるため、既存の標準レポートフォーマットは変わりません。「厳密な国際規格に準拠しなければならないので、社内のモデルファイルに影響しないソリューションが必要でした。PolyWorksは分かりやすく使い勝手もよい上、私たちの基準を満たしています」、とRoby氏は語ります。PolyWorksでは、レポートをリアルタイムに生成できるので、In Service Engineeringチームが現場で必要としている柔軟なレポート機能が得られます。さらに、PolyWorksのテクニカルサポートグループがRoby氏のチームと密接に協働して、現実に即したレポートを作成しました。その結果、レポートは最適化され、かつ、入力と出力がまったく同じであるためレポートモデルに影響することはありませんでした。
結果
当初、PolyWorksはCRJ Ground Support Equipmentチームの対称性およびアライメントチェックを支援するために購入されましたが、それ以上の価値があることが証明されています。「PolyWorksは私たちが必要としている多用途性を提供してくれます。私たちはこの製品を1つの目的のために購入しましたが、マッピングにも使用するようになりました」とRoby氏は語っています。Bombardierでは、PolyWorksを検査工程に統合することで、対称性およびアライメントチェックにかかる時間を75%短縮したことから、現在PolyWorksを水陸両用航空機の対称性用としても評価中です。
航空機はそのライフサイクルを通じ、何らかの構造上の損傷に耐えることになるため、航空機の修理において損傷評価は重要な手順であり続けます。幸いなことに、検査クルーを支援し、航空機を一刻も早く上空に戻すのに役立ち、さらにダウンタイムを減らし、コストを節約し、より安全な空の旅の保証に貢献すること、これを支える証明済みのソリューションがここに存在しています。