ラピッドプロトタイピングの検査を加速
O’Fallon Casting社、PolyWorks®の採用によりラピッドプロトタイピングの検査作業の速度を向上
1969年創立のO'Fallon Casting社は、米国ミズーリ州セントルイスから西へ車で20分の場所に施設を構える非鉄インベストメント鋳造企業で、アルミニウムから銅基材、シリコン金属炭化物基複合合金までの広範囲にわたってラピッドプロトタイプおよび量産鋳造品を製造しています。同社では2006年以来、3DスキャニングとPolyWorks®ソフトウェアソリューションを使用して鋳型および鋳造部品の点群ベース検査を行っています。
O’Fallon Casting社は、アルミ合金や銅合金などの非鉄金属のインベストメント鋳造のトップメーカーで、複雑多様化するエンドユーザーの需要を満たす、高品質で比較的安価な鋳造製品を提供することで定評があります。同社の5万平方フィートの施設で、アルミニウム、銅基材、シリコン金属炭化物基複合合金の広範囲にわたる鋳造を専門とし、鋳造品のみまたは顧客の仕様に合わせ機械加工した鋳造品の供給も行っています。
Global CMM、Metris XC50レーザースキャナおよびPolyWorksソフトウェアを使用してパーツの検査中のO’Fallon Casting社のBen Galmiche氏 (左) とTed Schnarre氏 (右)
背景
O’Fallon Casting社では、軍事ミサイル、電子パッケージ、バルブおよびポンプ、医療用・歯科用機器、高速自動精密機械、ハードウェア、事務機器、ロボット工学、光学・レーザー装置、シリコンウェハー加工機器、半導体製造装置など、幅広い分野の市場に製品を提供しています。
同社の売り上げで成長が著しい分野の1つが、ラピッドプロトタイピングです。CADファイルの3Dモデルから生成される拡張可能な鋳型を使用し、量産用型を製造する前に迅速にコスト効率良く部品の作成とその設計検証を行います。
「近年、鋳型表面の仕上げの質、精度、代替材料の面で多くの向上が見られ、今日の鋳型はインベストメント鋳造処理で製造されるニアネットシェイプにより対応しやすいものになりました」と、O’Fallon Casting社の品質担当エンジニアであるBen Galmiche氏は述べています。こうした向上のおかげで、鋳造部品のラピッドプロトタイピングは、型のコストを低減し、製品の迅速な市場投入を望む顧客に高い価値をもたらしています。
品質検査は鋳造ビジネスにとって重要であり、従来の接触測定による検査法はラピッドプロトタイピングに適していませんでした。
「昔は、効果的・効率的なソリッドモデルの検査法はなく、カンチレバー式の座標測定機とタッチトリガープローブを使用して寸法データを収集していました。このプロセスには時間がかかり、新しい方法を模索していました」、Galmiche氏はこう述べています。
解決策
従来のCMMプロセスに3Dスキャニングを追加
ラピッドプロトタイプの検査工程時間を短縮するため、O’Fallon Casting社では3Dスキャニングおよび点群ベースの検査を採用することにしました。古いCMMからHexagon Metrology社のGlobal CMMに切り替え、全方向で最適なポイント配分を行う部品検査用高速マルチストライプ3DレーザースキャナのMetris XC50 Cross Scannerを装備しました。また、この新しい3D測定システムと組み合わせて、PolyWorksユニバーサル3D計測ソフトウェアプラットフォームも導入しました。
特に、2008年にO’Fallon Casting社がボーイング787ドリームライナーに取り付けられる翼端灯用ハウジングの検査を受注したときなど、この投資の効果はすぐに現れ、これが正しい選択であることが証明されました。
O’Fallon社では、以下のようにして同社のラピッドプロトタイピング工程の全段階に点群ベース解析を採用しました。
- ステレオリソグラフィー (SLA) およびレーザー粉末焼結 (SLS) を使用して、顧客のパーツの3D CADモデルから翼端灯用ハウジングの鋳型を作成します。
- その鋳型について外観検査と手動検査を行い、パーツがCADモデルに一致しているか、また収縮に関して正しく比率が取れているかどうかを確認します。
- PolyWorks検査プロセスによる鋳型の検証および承認後、ラピッドプロトタイプの鋳型の周囲にセラミックシェルを鋳造します。
- 鋳型とセラミックシェルが焼結処理され、鋳型は蒸発してセラミックモールドのみが残ります。パーツをT6処理されたA356アルミニウムで鋳造します。
- Global CMMとMetrisレーザースキャナを使用してパーツを測定します。この作業中に収集された点群データが同社の内部ネットワークを介してPolyWorksに転送されます。
©Boeing
PolyWorksのIMAlignモジュールでのスキャン位置合わせおよびオーバーラップ削除
このプロセス全体を通じ、O’Fallon Casting社では3DデジタイジングとPolyWorksを使用して、模型鋳型とそのアルミニウムパーツの両方を検査しました。「PolyWorksソフトウェアのIMAlign™モジュールに寸法データをインポートすると、ベストフィットアルゴリズムを使用してスキャンパスが自動的に位置合わせされ、パーツの点群モデルが作成されます」と、Galmiche氏は説明します。「この時点でモデルを綿密に調べ、このモデルをお客様のCADモデルと正確に比較するために必要なデータがすべて揃っているかどうかを確認し、必要であればそのパーツをCMMに戻して、別の視点から寸法データを収集します」。
これらのプロトタイプパーツの寸法データを収集する際、O’Fallon Casting社では超低速のスキャニングを使用して、パーツの特徴を細かく確実に取得されるようにしますが、このプロセスでは余分なデータも収集されます。「私たちはIMAlignのオーバーラップ削除機能を使用して、二重に重なってしまったデータの余分な部分を自動的に削除し、パーツの寸法を正確に定義する点データを作成しています」と、同氏は述べます。
次に、PolyWorksの IMMerge™モジュールを使用して、位置合わせされたスキャンをマージし、デジタルパーツの高精度で細密なポリゴンメッシュモデルを作成します。
カラーマップを使用したグローバル偏差解析
PolyWorks|IMInspect™モジュールを使用した側面の厚み、クリアランス、3D角度および平面度の解析
「簡単なIMInspectツールを使用し、お客様のCADモデルと比較してパーツが許容値外である部分を素早く確認できました」(O’Fallon Casting社、品質担当エンジニア、Ben Galmiche氏)。
その後、ポリゴンメッシュモデルは実際の寸法検査プロセスのためPolyWorks IMInspect™モジュールにエクスポートされます。このIMInspectでは、拘束ベストフィットなどデータとCADのパワフルな位置合わせ技術と、点群処理の技術が利用されており、サーフェスと断面の偏差、フィーチャーの寸法とGD&T制御、クリアランス、ならびに厚みの完全解析用比較および測定ツールが含まれています。この特別プロジェクトでは、以下のように5つの特定のIMInspectツールを使用して翼端灯用ハウジングの検証を行いました。
- 各デジタルポイントとそれに対応するCADとの間で偏差を計算してグローバルに比較。O’Fallon Casting社が設定した許容値に従いカラーマップを表示。
- 光が遮られることなく投影されることを確認するため、2つの平面間の3D距離を比較してパーツのクリアランスを測定。
- 2つのポイント間の3D距離を計算して側面の厚みを測定。これにより、その堅牢性と、パーツが設計要件を満たしていることを保証。
- 2つの平面 (データムAとデータムB) 間の平面度と3D角度をPolyWorksのGD&Tエンジンで計算。設定した許容値に従いOK/NGの結果を表示。
Galmiche氏は、PolyWorksソフトウェアのレポート生成機能を使用して、AS9102形式の検査レポートを作成しました。「私たちはこの計算データのほか、パーツが許容値外であることをお客様が簡単に目で見て確認できるように、モデル比較の写真を付け、パーツが許容値よりわずかに外れている部分と大きく外れている部分を色分けして示しました。さらには、無償ソフトウェアPolyWorks|Viewer™を使用することで、お客様と検査データを共有することが出来るので、お客様自身のパソコン上で検査プロジェクトを視覚化していただけました」。
©Boeing
メリット
O’Fallon Casting社では、Global CMM、Metris XC50レーザースキャナ、PolyWorksソフトウェアの組み合わせにより、パーツのラピッドプロトタイピングの時間が大幅に短縮されました。「全体的に、この新しい点群ベースの検査工程に大変満足しています」と、Galmiche氏は述べています。「典型的なパーツの場合、必要な寸法データを約1日で収集でき、PolyWorksソフトウェアを使用してデータ解析を半日以下で行うことができます。これは、以前のプロセスよりも50%の時間短縮です。さらに、データの視覚化により、以前に比べてすぐにお客様に検査レポートを確認し、寸法データ解析の結果を理解してもらえるようになりました」。
その他
O’Fallon Casting社では、自社の鋳型および圧縮強化用治工具の検査にもCMM/レーザースキャナ/PolyWorksソフトウェアの組み合わせを使用して、設計に適合しているかどうかを確認しています。PolyWorks|Inspector™は、治工具の摩耗部分やわずかに許容値外である部分を素早く正確に表示します。
Galmiche氏は、この新しい検査工程を他の分野にも活用できると考えています。「お客様数社から以前、熱などの環境条件によって故障が起こるかどうかを確認するために、ある装置を検査してほしいと頼まれたことがあります。このような依頼は、そのパーツをスキャニングして、PolyWorksソフトウェアを使用して実際の寸法データを設計意図と比較することで簡単に実現できます。これは、私たちにとって新しく開拓されるビジネス分野となるかもしれません」。