下請け企業からパートナーへ、サードパーティーの案件もこなす企業へと成長
価格が発注を決める時代の終焉
イタリアのエミリア=ロマーニャ州にあるモデナを拠点とする機械系の下請け企業OSIMは、計測設備への投資を行い、競争が激化する市場で高品質の製品を作ることで、クライアントにとってかけがえのない存在となるまでに成長してきました。
課題
OSIMはモデナの中でもサン・プロスペロを拠点とし、サードパーティー向けの機械加工を請け負っています。イタリアの機械系下請け企業として、溶接、深絞り、切断、折りたたみ曲げ、穴あけ、レーザー切断などの事業を営む多くの一般的な中小企業と同様、OSIMは、新興国に拠点を置く企業との競争に直面していました。規格に準拠した高品質で信頼性の高い製品を提供するだけでなく、顧客に喜ばれる確かなノウハウを持つ真のパートナーとしての地位を確立できるようなサービスを、コスト負担を強いることなくクライアントに提供できるようになるためには、進化したコンピテンシーと革新的な技術を築き上げる必要があると同社は考えました。
解決策
工場長は、進化に向けた同社の戦略を詳しく説明します。「低価格でも、より進化した機能を製品やサービスに追加することで、その提供水準を高めることにしました。そのために私たちは革新的な手法と技術、そして人材育成にも、かなりの投資を行っています。あらゆる企業にとって人材こそ、なくてはならない重要なリソースだからです。それは決してすぐに結実するものではありませんが、抜本的な改革です。ただの部品供給業者から、パートナーへと徐々に進化していったのです。部品を作るだけでなく、計画、試作、品質管理の段階から共にそれを改善し、競争力の強化に寄与してくれるパートナーは、共同設計に関する限り、クライアントにとっては重要な資産です。そこで当社はまず、クライアントにコンピテンシーを提供することにしました。どのクライアントも規模は当社よりずっと大きいですが、それにもかかわらず内部的に不足しがちな領域なのです。加えて、一連の製品管理全体を直接遂行するようになりました。お客様の間では、製品管理の情報提供への要望が次第に大きくなってきているものの、コストとして認識される機会は減ってきています。」
OSIM社で試験検査官を務めるAlex Nakhleh氏
製品やプロセスの品質を保証するということになれば当然、計測設備への投資が必要になります。試験検査官を務めるAlex Nakhleh氏(32歳)はこう説明します。「当社にとって欠かすことのできない計測室を拡張し、刷新することにしました。製品保証に関して高まるお客様の要望を満たす必要性を幹部が十分に理解したうえでの決断です。その間に私たちはアーム型測定機を導入しました。特定の座標に対する基準ターゲットの位置をスキャンして検査するために必要でした。この検査はキャビンを基準として実施されますが、私たちはそこに取り付けられることになる、たった1つの部品を生産していました。しかし実のところ、それらのターゲットの原点がわからなかったのです。
この点は、アーム型測定機の提供元のアドバイスによって解決しました。測定機に同梱されるソフトウェアよりも進化した、PolyWorks|Inspector™という計測ソフトウェアを追加するというものでした。このソフトウェアは、イタリアに子会社(PolyWorks Europa Italia)を持つ、カナダ企業InnovMetric社によって制作されたものです。新しい3D計測ソフトウェアの効果は、計り知れないほどのコスト削減となって、すぐに結果に現れました。基準ターゲットの検出と部品の位置合わせが、ものの1分でできるようになり、きわめて高い精度の作業が可能になったのです。私のような経験の乏しい試験検査官にとって、それはまるで「渡りに舟」でした。加えて、トレーニングコースや電話でのヘルプサービスもあります。経験豊富なアプリケーションスペシャリストが揃っていて、こちらからの技術的な質問にも数分で最適な解決策を提示してくれるので、何かあっても業務を続けることができました。」
工場長は次のように付け加えています。「新しい技術を用いた製品を選定するとき、購入後のサポートの充実は、私たちにとって、もはや必須条件となっています。PolyWorks®ソフトウェアの場合、特筆すべき点は、提供されるサポートサービスの品質と有効性だけでなく、クライアントの考えや提案に真摯に耳を傾ける姿勢です。そのような声によって製品が改良され、定期的なバージョンアップによってすべてのクライアントに還元されていきます。」
OSIMでは、従来の測定機器(マイクロメーター、ダイヤルインジケーター、ダイヤルゲージ、ノギスなど)のほかに、3次元測定機、投影機、粗さ試験機、前述のアーム型測定機など、破壊試験と非破壊試験を行うための測定機器も備えています。同社の金属組織検査室には、硬度計、測定顕微鏡、手動バフ研磨機、つや出しプレスのほか、非破壊検査の一種である液体浸透探傷試験(PT)システムが備わっています。加えて同社は、サンプルや試作品を提供することができます。生産試験に向けた暫定的な機器の製造もそこには含まれます。
社員育成への投資も重要な要素です。Nakhleh氏は、「私はまだ一人前になるために精進している段階ですが、PolyWorks Europa Italiaのおかげで、PolyWorks|Inspectorの検査オブジェクトとその作成方法、正しい位置合わせ手法による効率化の方法などを身に付けることができました。それらすべてが、仕事をする上で何よりの訓練となりました。」と述べています。「溶接やプレスの分野におけるOSIMの成長のおかげで、私は金属工学への理解を深めることができたと思います。徐々にですが、たとえば金属板の深絞りと同様、材料の特性をより柔軟に可視化できるようになってきました。会社が何年にもわたって与えてくれたそのトレーニングがあったからこそ、私は今、ノウハウや能力を、クライアントサービスとして還元できるまでになっています。プロフェッショナルとして、そして一人の人間として成長し、目に見えない自分自身の可能性を表現する大切な場をどうすれば見つけることができるか、この私の個人的な経験は、今の若い人に示す証となることでしょう。それを実現するためには、好奇心や意思の力、多大な努力、そして当然、私たちの能力を最大限に引き出したいと考え、またその方法を知っているOSIMのような勇気ある企業の信頼が必要なのです。」
メリット
計測設備への投資は、OSIMに多くの付加価値をもたらし、その製品やサービスの水準の引き上げに大きく寄与しました。同社は、その後、クライアント企業の実際のパートナーになり、かけがえのない地位を獲得するまでに至ります。工場長は次のように話します。「私たちが持つ技術的・人的リソースによってAlexは、必要に応じて品質管理マネージャーとしての役割を果たすこともできます。当社よりもはるかに規模の大きいクライアント企業にでさえ存在しない職種です。必要な検査をすべて社内で実行できるように、クライアント企業がこのような職種を設け、研修を行い、最高の技術をすべて装備しようとしても、コストがかかりすぎて難しいのです。」
「そこで、我々のように小さな企業は、クライアントの特定の側面を計画段階からサポートし、高度な診断を実施できるよう、ニーズに応じてその体制を調整するように順応してきました。もちろん、そのようなサービスに対して対価を要求することもありません。それは、はるかに大きな恩恵となって私たちに返ってくるからです。その恩恵とは、量的・質的成長に見合った、信頼できるパートナーとして認められるということです。また、他の潜在顧客に当社の存在が絶えず宣伝されることで、市場からも報酬がもたらされます。つまり、価格が下がり続ける市場でも、勇気を奮い起こして合理的な自己投資をすれば、どんな中小企業でも、価値を高めることができるのです。」
Nakhleh氏はこう続けます。「私たちがクライアントに提供する付加価値は、仕事を獲得する段階で重要になります。新しい部品を作るために何が必要で、どのような検査が必要か、そして、それらを当社が提供できるのかどうかを判断するときです。一見シンプルな部品であるあぶみの場合、私たちは初回生産品をスキャンした後、連続した制御操作をスピードアップし、エンドクライアントの組み立て基準に対してそれらを効率化する方法を見つけました。そして、そのすべては制御治具の作成に活かされています。つまり、スキャン測定といくつかの検査を行うだけで、部品そのものの、効率的かつスピーディな真のベストフィットを生み出すことができるようになったのです。そのすべては、生産工程との相乗効果を生み、企業として重要な競争優位性を持つことは間違いありません。」
市場も、OSIMの進化に敏感に反応し、経済的な成果を同社にもたらしてきました。工場長は言います。「売上と潜在顧客の持続的な増加から判断するのであれば、それは明らかです。お客様は高品質の提供業者を求めてやって来ますから、当社にコンタクトを取ってきた時点で、私たちの部品が決して格安品などではなく、製品やサービスの品質の観点からその価格が適正であることを既に知っています。生産レベルの高さは前提条件なので、私たちのサービスと製品保証は、まさに潜在顧客が求めているものなのです。」
「OSIMは計測分野への投資を続けていきます。」と工場長は説明します。「クライアントは、品質が保証された新たなサービスを常に求めていて、私たちも新しいタイプの生産管理を提案したいと考えているからです。私たちが選んだ道は、もうはっきりしています。私たちは詳細な特性に従って個々の部品を廃棄物ゼロで生産することを目指しています。そのために当社は、これを最大精度かつ適切なタイミングで検証するために、必要な測定機器を装備しなければなりません。品質を高め続けるためには、より一層進化した測定機器、つまり絶えず増大するきわめて特殊な要求を満たすことのできる測定機器の所有が不可欠なのです。」
昨年にOSIMが実施した投資と取り組みは、早くも定着してきており、いまだ出口の見えないパンデミックの最中にありながらも予想を超える成果を上げています。2019年には370万ユーロだった同社の売上高は、2021年末には600万ユーロにまで増大する見込みです。しかも、この飛躍的成長は、2019年との比較で2020年末までに獲得した収支的利益にですら垣間見えます。ロックダウンによって強いられた数週間の非稼働期間を経た後にもかかわらずです。この成長は、従業員数がパンデミック前の28名から42名に拡大されたことや、3つ目の工場が間もなく完成することにも表れています。
同社の進化を振り返りながら、工場長は次のように結んでいます。「今日の中小企業がたどるべき道は、何よりもまずクライアントに利益をもたらす何かに投資することです。そうすれば、特定の注文品の製造業者としてだけでなく、しだいにサプライヤーやパートナーとして頼りにしてもらえるようになります。もう1つ重要だと思うのは、中小企業もまた、自分たちを競争力のあるイノベーションのプロセスを通じて助けてくれるテクノロジー、ソリューション、サービスにおけるサプライヤーやパートナーを見つけるということです。私たちにとってはそれがPolyWorks Europa Italiaでした。最後に、当社の方針をより深く理解していただくために、ちょっとしたエピソードをご紹介します。以前、あるクライアントが、部品の組み立ての精度について不安を漏らしていました。外部のコンサルティング業者によって実行された測定結果に、許容範囲を超える誤差が見られるという内容でした。私たちは、この外部のコンサルティング会社の責任者に、当社の試験検査官であるAlexを紹介しました。そこでAlexは、主要なスキャンポイントに対して適切に位置合わせを行う方法を技術者たちに示して見せたのです。この話から得られる教訓は何でしょうか。最終的に、当社の指示に従って測定を繰り返したところ、部品が完全に仕様に準拠していることがわかり、当然、私たちも非常に満足しました。結果的に、金属プレス板について優れたノウハウを持つ企業が、まさに同じ分野を専門とする別の企業に適切な測定方法を伝授する形となったのです。」
OSIMは計測設備の収益化によって急速に競争力を高め、製品コストがほとんど問題にならないほどの関係をクライアントとの間に築き上げています。「土木や工業オートメーションの主要業界で基準となる勢力」、今や同社はそのように自社を位置付けています。